『とりわけ10月の風が』

1. イタリアの天使 作詞・作曲/小林政広

あー、たくさんだ、こんな風の吹く公園は
よごれた新聞紙が、空に舞う
ここにもないですか ここにもないですよ
あそこにもないですか あそこにもないですよ
穴ぼこはないですか だまされないでおくれ
これまでだつたんですね
ここまでだったんですね

いつか君の住むイタリアへ行きたい
田舎町じゃ埃もたつだろう
そんなに遠い話じゃないんだ
ポケットは絵筆で一杯だから
たくさんの色を使った浜辺で腰をおろし
あの国のことを思い浮かべてみよう

ねぇ一体どうしたんだい
いつもはうつむいてばかりいるくせに
何をそんなに浮かれてるんだい
大嫌いだあんたが直ぐに逃げちまう
今日限りでここを出ようと思う
さようなら年老いた意気地ない詩人達よ

魂は少し磨り減っちまった
望みもそんなにありやしない
でもいつだつて思いのままさ
この通り翼だってあるもの
空を飛んで行くのもいいな
出来ればこんな風の吹かない朝にでも

おめでとうちっぽけな唄を贈ります
おめでとう おめでとう
いつだつて君のもとへ駆けつけたいだけ
おめでとうちっぽけな唄を贈ります
一晩の内に素敵な恋をしてしまう
君はこの町で、たったひとりの天使だ

このまま死ねるんなら立ったままで
三日月お月さん ごきげんよう
まるでとるに足らない毎日よ
君の足音だけでも残して行っておくれ
まるでとるに足らない毎日よ
君の足音だけでも残して行っておくれ

3. 行こうよ、浅草いかした靴買いに 作詞・作曲/小林政広

行こうよ浅草 イカした靴買いに
行こうよ浅草 イカした靴買いに
おいらの靴は、もう穴だらけ

行こうよ浅草 イカしたあの娘と
行こうよ浅草 イカしたあの娘と
もの憂いブルース 部屋でお留守番

ねえじいさん おいらを連れてって
あんたの生きてる 浅草へ
おいらあの娘を呼び出すさ
もしそんな気分になれたなら

行こうよ浅草 行こうよ浅草
行こうよ浅草 行こうよ浅草
おいらのボロボロ靴におさらばよ

4. 君の胸の中で休ませておくれ 作詞・作曲/小林政広

ねえ 君の胸ん中で、休ませておくれ
ねえ 君の胸ん中で、休ませておくれ
おいら凍えた冬を両肩からぶら下げている
ねえ 君の胸ん中で休ませておくれ

一晩明かして おいら 働きづくめ
一晩明かして おいら 働きづくめ
ろくな仕事になんてありつけやしねえし
一晩明かして おいら 働きづくめ

明日にはきっと帰ろう そうきっと帰ろう
君の夢をみて眠るのも 今夜限り

ねえ 君の胸ん中で休ませておくれ
君の夢を見て眠るのも 今夜限り

5. 最終列車 作詞・作曲/小林政広

今夜は 草にうもれて寝よう
汽車の通る音を聞いて
やさしく話しかけてくれる
夜風に頷きながら

天国が おいらの住家
あったかいねぐらが待ってる
この世にいる限り働くか
うろつきまわるしかないおいら

ねえ 旦那 お尋ねします
天国へ連れてってくれる
最終列車は今
どこいらを走っているんでしょう

今夜は淋しい気持ち
深く目を閉じてみよう
見知らぬ町へと急ぐ
愛するホーボーのように

人恋しさにかられて
いつまでも夢見ていた
でも知ってるんだこんなときは
ひとりでいることだって

7. たそがれ時 作詞・作曲/小林政広

この町が、暮れる前に
この町が、暮れる前に
ひとりぼっちのこの夜に
君が歌ってくれないものか

古めかしい三連符が響く
古めかしい三連符が響く
この重たい靴で歩く
君もいないコカインの木の下

夢見ているんだ君のことを
夢見ているんだ君のことを
ふらつこうこの大嫌いな町を
親指ポケットに突っ込んで

夢から覚めてみたら
夢から覚めてみたら
君だけがひとり僕から
随分と遠く離れていた

僕はコカイン木の下
僕はコカインの木の下
たそがれ時たたずんだ
唄はいつまでも出てこなかった

8. スイング・ジャズ 作詞・作曲/小林政広

彼は国中を旅したのさ
そして沢山の人生を唄い続けた
夜のその一時に 幻をなくしながらも
今も国中を旅しているのさ
いやしきれない心臓を高鳴らせては
会ったこともない人と語り明かした
行ったこともない町の片隅で
素敵な女の子に抱かれているのさ

小さな町 明るく輝いている光
そして働き者はいつだって陽気だった
誰もがその通り 旨く行っていた
そしてカウンター隅には酔いつぶれた男が、ひとり
いつだって夢を見ることは簡単なこと
自分のなれなかったたくさんの人生を
冷え切ったベッドの中で歌い続けた
ただそう それだけのこと

静まり返った夜 彼は歩き続けた
まるで何もかもが冷え切ってしまうようだった
でも次の朝がわけなくやってくるように
その幻をまぎらわすことを知っていたんだ

小さな街 明るく輝いている光
そして頭の中ではスイング・ジャズが鳴り響いている
正しいことなんて何もないんだ
そして 間違っていることなんか何もないんだ

9. シャンソン 作詞/高田渡 作曲/早川義夫
ねえ、待ってくれるかい?
ボクの友だちよ
ねえ、待ってくれるかい…。
ボクがシャンソン歌うまで
ボクにシャンソンが歌えるようになるまで
ねえ、待ってくれるかい
あったかいセーターが欲しい
あったかいマフラーが欲しい
あったかいスープとコーヒーが欲しい
あったかい話が欲しいんだ
ねえ待ってくれるかい?
ボクの友だちよ
ボクがシャンソン唄い出すまで
もうじきなんだ…。

10. 六月、松本の夜 作詞・作曲/小林政広

さびついた鉄道は西へ東へ伸びている
ここまで来て、雨に打たれ立ちすくんでいるボクと君
こんな気分もたまにはいいもの
まして素敵な君と一緒
もう少しだけこのままでいようギターケースを両手で抱えて

昔、君は泣き虫だった 酒を飲むたび泣いてばかりいた
そんな君の後ろ姿に今夜はおいらただついて行きたい
息苦しい雨も明日にゃ上がる それまでおいらにとっておきの
ブルースを歌っておくれ 帰りを待ついい子のように

夜汽車の泣き声に おいら 答えてみるよ
こうして一日が明けて こうして一日が暮れていくんだって
初めての町でおいら君と
不機嫌そうに明けていく空眺め
まるでいつもの朝を迎えるように
時はゆっくりと過ぎて行く

六月、松本の夜
おいらひと晩限りの夢抱え
よそ者同士の言葉で君と誓い合いたい
寒さに震えていてもおいら何度でも頷いているよ
寒さに震えていてもおいら何度でも頷いているよ

11. 寒かったころ 作詞・作曲/小林政広

もう見えなくなります
汽車は通りすぎて行きます
もう見えなくなりました
汽車は通りすぎて行きました

陽が昇るころもう一度
陽が昇るころもう一度
ここまでやつてこようと思います
陽が昇るころもう一度だけ

好きだったあの子は
この町にはいません
好きだったあの子は
もうどこの町にもいやしません

ひとりぼっちだつたことを知って
ふと ひとりぼっちだったことを知って
可哀想な町だと言って
ボクは眠りにつきました

この町を出る前に
この町を出る前に
窓を閉め切ってしまいました
そして、眠りにつきました