『日本の悲劇』 ”Japan’s Tragedy”

Director’s Statement
この映画のシナリオを、ボクは遺書を書くような気持ちで書きました。 3.11のあの悲劇をはさんで、多くの日本人は、見えない何かに絶えず追い詰められていました。 それは、今も変わるどころか、更に、深刻さを増しています。 この映画で、取り上げた「ある日本人の家族」の悲劇は、2010年東京で、実際に起こった事件を基にしています。 生きていくために必要な事は何なのか? 絆やつながりを呼び掛ける前に、ボクたちは、ボクたち自身に繰り返し問い続けなければならないと思います。
小林政広 2011年

photo

脚本・監督:小林政広
撮影:大木スミオ
照明:祷 宮信
録音:福田 伸
美術:山﨑 輝
編集:金子尚樹

村井不二男: 仲代達矢
村井義男:北村一輝
村井とも子:寺島しのぶ
村井良子:大森暁美

撮影:2011年10月 東京・国際放映スタジオ
公開:2013年8月

Comment

関根忠郎(惹句師)
あってはならないことが、この国で起きている。

野上照代(元・黒澤組マネージャー)
これは仲代達矢にしか出来ない役だろう。
いや仲代達矢しか引き受けなかっただろう。
後姿で十五分もの芝居はスターにとって嬉しくない。
小林政広監督の演出は、これでもかといわぬばかりに野心的である。

東ちづる(女優)
どんなニュースを見たり聞いたりするより
この国の悲しい現実が胸に突き刺さる。
自分ごととして。

綾戸智恵(ジャズシンガー)
親が居るから子は育つ。
親が有るから子は巣立つ。
どうぞベリーエンディング。
みなさんもいろいろ思うやろ。
監督のつけた悲劇!
それをうちやぶる私たちになります。
それが、日本です。
監督、ありがとう。ええ映画や。

大沢悠里(TBSラジオ ゆうゆうワイド パーソナリティ)
『鬼優』という言葉があれば正にそれは仲代達矢を指す。
その仲代に真っ向勝負を挑む北村一輝。
この映画が描く「日本の悲劇」とは何なのか。観て愕然とする。

高木美保(タレント)
「働かずにお金が儲かったらなあ 」と誰もが一度は考える。
それは不幸だから?幸せだから?

郷田マモラ(漫画家)
心を抉られるような思いで観た。
父と息子のふたっきりの家の中、父が死のうとしていても誰もふたりを気にかけない。
また、助けを求めようともしない恐ろしい現実。
鮮やかな過去の<家族>の幸福と、色彩の失われた現実の<父と息子>の対比が、より痛烈に今の日本を浮かび上がらせている。
しかし、この絶望の中でもふたりの人間はお互いを思いやっている。
これが<家族>なのだ!!息子の魂の慟哭に涙が止まらなかった。
日本はこのままでいいのか?どうすればこのような悲劇がなくなるのか?人間ひとりひとりに何ができるのだろうか?
深く深く考えさせられる……。

瀬々敬久(映画監督)
小林さんの映画はいつも容赦がない。
「日本の」と題名につけることができる精神もただものじゃない。
ニッポンの甘さもジャパンの媚びも許さない。
だけどスクリーンを前にしたら容赦のなさの中に身を晒していればいい。
日常に戻った時、世界が少し変わって見えてきた。

山懸美幸(ライター)
これが現実だ、と胸を衝かれた。私自身の物語だとも思った。
突き放すような冷たさは、少しもない。
仲代さんの表情、北村さんの叫び、簡素な演出。すべてに救われた。

今村修(朝日新聞読書推進事務局長)
今更ながらなぜこんな世間になってしまったのかという問いを新たにしました。
家族という場所から、今の日本のいびつな姿が見えてきます。
胸を突かれるラストシーンです。

紀平重成(コラムニスト)
ほぼモノクロームの映像。なのに、色彩感覚にあふれる。
登場人物わずか4人。それなのに、多彩な演技を堪能できる。
ストーリーはシンプル。なのに、現代日本社会が抱える問題をあぶり出す。
小林政広監督の最新作は、無骨なまでに問題を掘り下げて行くこれまでの路線をさらに深化させている。

せこ三平(ライター)
戦後、精神性も家族もズタボロにされてきた日本のお父さんが、最期に選んだ究極の愛。病院で延命されて苦しむより幸せだと思う。現代に甦った即身仏。

福嶋真砂代(ライター)
悲劇といいながら、なんとも喜劇のような、それがますます哀しい。
日本の闇を繊細に丁寧に巧みな演出で具象化していく小林作品にあらためて脱帽でした。胸に突き刺さりました。

川瀬陽太(俳優)
『日本の悲劇』タイトル通り今を生きる日本人が誰しも孕んでいる悲劇が、スペクタクル映画の様に家族を襲う。
決壊したダムの如き日本の惨状。怒りや悲しみや諦めの絵の具で描き殴られたカンバスは、目を逸らし続けていた我々自身の「滑稽な地獄絵図」を露わにしてゆく。

岩永めぐみ(編集/ライター)
不器用な生き方しかできない人間がいる。
この作品を通して心にとどめました。
孤独、無縁社会を厳しくも真摯にとらえた
小林政広監督と出演者に感銘を受けるとともに、
モノクロの映像に浮かび上がる仲代さんはさすが印象深く、
その映画俳優人生を思い起こさせました。

今泉力哉(映画監督『こっぴどい猫』)
人はいくつになっても生きにくさを感じて生きていて。
普通に働いたらいいじゃん、とか、普通に逃げたらいいじゃん、とか、
普通に甘えてるだけじゃん、とか、言うのは簡単、あなたは強いんだよ、あなたが思っているより。
小林政広監督『日本の悲劇』は、不器用な人、弱者の味方。
今すぐじゃなくても、いつか、誰かがこの映画を見て、救われる時が必ず訪れると思う。

北島明弘(ライター)
凡百の娯楽映画を寄せ付けぬ、パワフルな作品だと思いました。

遠藤薫(映画ライター)
いつも時代に真正面から挑戦するかのような作品を発表する小林監督らしい、素晴らしい力作でした。あの結末をどう捉えるかは本当に人それぞれだと思いますが、私はわずかな光を感じたような気がします。
感じたいと思いました。

出来谷英剛(映画ライター)
いつものように小林政広監督らしい考えさせられるテーマでした。
テーマがテーマだけに一般受けは難しいと思いますが、 観れば誰の心にも何か引っ掛かる物語だと思うし、こうした映画は是非映画館で内容と対峙して観て頂きたいと思いました。

大江治(TVプロデューサー)
『日本の悲劇』・・・小林監督がまたやってくれた!
作品の個性もメッセージ性も圧倒的で目が離せません。

マヒトゥ・ザ・ピーポー(下山)
色をおとしてから人の延命がはじまる。
何年も何十年も延命させられて果てるイノチの声。
二十代前半のわたしにもリアリティをもってこの声をきけてしまうこと、これ自体が日本の悲劇じゃないか。
ひとはなにに疲れるのだろう。

春日太一(映画史研究科)
仲代達矢さんが80歳にして到達した新境地。
挑戦し続ける男の凄味が、スクリーンに叩き付けられています。

ヤン・ヨンヒ(映画監督『かぞくのくに』)
愛、犠牲、選択、放棄、絶望、親と子、生と死、社会、時代…
湧き出る問いへの答えは全く見つからず、今も途方に暮れています。
日々の営みを包む筈の“家”が“檻”に見えた瞬間、嗚咽を越えて吐き気さえ憶えました。泣けたら少しは楽でしょうか。
小林政広監督、助けて下さい!

鈴木太一(映画監督『くそガキの告白』)
「お父さん」と父を呼ぶ息子の優しい声が頭から離れない。
自分は父をそう呼べていたのだろうか、観終わった後ずっと父のことを考えていた。
映画を通じて久しぶりに父に会えた気がした。
だから悲しかったけど、嬉しかった。
『日本の悲劇』は、ぼくにとって一生忘れられない映画です。